渓流釣りの危険というと、熊やスズメバチ、急な増水みたいな「分かりやすく怖いもの」を先に思い浮かべます。
でも実際に山へ入るなら、もう少し小さな存在にも気をつけたいところです。
それがマダニとヤマビル。
どちらも派手に飛んできたり、大きな音を立てたりするわけではありません。
釣りに夢中になっている間に服へ付いていたり、帰ってから身体を見て「あれ、これ何だ?」と気付くこともあります。
しかも、この2つは同じ「吸血する生き物」でも、危険性も対処法もかなり違います。
この記事では、渓流釣りで遭遇しやすいマダニとヤマビルの違い、付着を防ぐ服装、虫よけの考え方、見つけたときの対応まで整理します。
アブ・ブユ・ハチなどを含めた虫対策全般については、こちらの記事でまとめています。
▶ 渓流釣りの虫対策マニュアル|服装・虫よけ・刺されたときの注意点
- まず知っておきたい。マダニとヤマビルは別の危険
- マダニはどこで付く?川の中より「川までの道」に注意
- マダニ対策は「肌を出さない+見つけやすくする」
- 虫よけはDEET・イカリジン。ただし過信しない
- 服にマダニが付いていたら?まだ吸血していないなら取り除く
- 皮膚に食いついたマダニは、無理に引き抜かない
- マダニに刺された後は、数週間だけ体調を意識する
- 帰宅したら「風呂ついでのマダニチェック」
- 渓流でいう「ヒル」は、主にヤマビルを意識する
- ヤマビル対策は「足元の隙間」を減らす
- ヤマビルが付いていたら、火で炙らなくていい
- ヒルを取ったあと血が止まりにくいのは珍しくない
- マダニとヤマビル、僕ならここだけは毎回見る
- 怖がりすぎず、「違いを知っておく」がちょうどいい
- 参考にした公的情報
まず知っておきたい。マダニとヤマビルは別の危険
この記事でいう「ヒル」は、川の中にいるヒル全般ではなく、山道や湿った林床などで人や動物に付着するヤマビルを中心に扱います。
マダニとヤマビルは、どちらも気付かないうちに吸血されることがありますが、その後の注意点は同じではありません。
| 比較 | マダニ | ヤマビル |
|---|---|---|
| 主に注意する場所 | 草むら・藪・森林・野生動物が出る環境など | 湿った林床・落ち葉・山道・獣道周辺など |
| 気をつけたいこと | マダニ媒介感染症 | 吸血後の出血・かゆみ・傷口 |
| 吸血中に見つけたら | 無理に引き抜かず、皮膚科などへ | 吸盤を外す、または塩・適用のある忌避剤などで離す |
| その後 | 数週間は発熱など体調変化を確認 | 傷口を洗い、清潔なガーゼなどで止血 |
マダニはどこで付く?川の中より「川までの道」に注意
マダニというと「山奥だけの話」に感じるかもしれません。
でも国立健康危機管理研究機構(JIHS)では、野生動物が出る森林だけでなく、民家の裏山・畑・あぜ道などにも生息すると案内しています。
渓流釣りで考えると、川の中よりも、
- 入渓前に通る草むら
- 藪を抜ける場所
- 林道や獣道
- 退渓時に登る斜面
こういった場所を歩く時間の方が、接触する機会は多くなりやすいと考えた方がいいです。
「ウェーダー履いてるから大丈夫でしょ」と思ってしまいそうですが、腰・手首・首まわりなど、足元以外から入り込む可能性もあります。
マダニ対策は「肌を出さない+見つけやすくする」
厚生労働省やJIHSが案内している基本は、かなりシンプルです。
肌の露出を減らして、服の隙間から入りにくくすること。
- 長袖・長ズボンを着る
- 足をしっかり覆う靴を使う
- シャツの裾をズボンへ入れる
- ズボンの裾を靴下や長靴へ入れる、またはゲーターなどを使う
- 首・手首などの露出も減らす
真夏の渓流だと、「そんなに着たら暑いよ……」という気持ちも分かります。
なので、吸汗速乾性や通気性のあるウェアを選びながら、暑さ対策と両立させるのが現実的です。
もうひとつ覚えておきたいのが服の色。
厚生労働省は、服に付いたマダニを見つけやすいという理由から明るい色の服装をすすめています。
「明るい服なら寄ってこない」という意味ではなく、付着した個体を見つけやすくするためです。
虫よけはDEET・イカリジン。ただし過信しない
マダニ対策では、DEET(ディート)やイカリジンを有効成分とする虫よけ剤も選択肢になります。
ただし、ここで大事なのは「スプレーしたから今日は大丈夫」と思わないこと。
JIHSも、忌避剤によって付着数を減らす効果は期待できるものの、完全に付着を防げるわけではないとしています。
僕なら虫よけだけに頼らず、
服装で隙間を減らす → 虫よけを使う → 釣行後に身体を見る
くらいの3段構えで考えます。
製品によって対象害虫・使用できる部位・年齢・塗り直し方などが違うので、「マダニの忌避」が対象に入っているかを確認し、表示どおりに使ってください。
服にマダニが付いていたら?まだ吸血していないなら取り除く
釣りから戻って服を見たら、小さなマダニが歩いている。
これはまだ皮膚へ食いついていない状態です。
JIHSでは、服に付いたマダニをガムテープや粘着クリーナーなどで取り除く方法も紹介しています。
車へ戻ったタイミングで、ズボン・袖・ザックなどをざっと確認しておくと、家の中へ持ち込みにくくなります。
ただし、すでに皮膚へしっかり食いついている場合は話が変わります。
皮膚に食いついたマダニは、無理に引き抜かない
マダニを身体に見つけると、反射的に「取らなきゃ」と引っ張りたくなります。
でもここは我慢です。
吸血中のマダニは皮膚へ口器をしっかり差し込んでいるため、無理に引き抜くと一部が皮膚内に残ったり、トラブルにつながる可能性があります。
厚生労働省やJIHSは、無理に引き抜かず、皮膚科などの医療機関で除去してもらうよう案内しています。
吸血中のマダニを見つけたら
自分で強く引っ張ったり、つぶしたりせず、皮膚科などへ相談しましょう。受診時には、山や草むらへ入ったことも伝えてください。
「小さい虫だし、家で取ればいいか」と考えたくなるところですが、ここは自己流で頑張らなくていい部分です。
マダニに刺された後は、数週間だけ体調を意識する
マダニが注意される理由は、吸血そのものだけではありません。
SFTS(重症熱性血小板減少症候群)、日本紅斑熱、ライム病など、複数の感染症を媒介することがあります。
もちろん、マダニに刺されたら必ず感染症になるわけではありません。
必要以上に怖がる必要はないですが、厚生労働省は刺された後、数週間程度は体調の変化に注意するよう案内しています。
発熱などの体調不良が出た場合は早めに医療機関を受診し、
「○日前に渓流釣りへ行き、マダニに刺された」
と伝えましょう。
山へ行ったこと自体を伝え忘れると、医師側も状況を把握しにくくなります。
帰宅したら「風呂ついでのマダニチェック」
マダニ対策って、山で全部終わるわけじゃないんですよね。
むしろ帰ってからもうひと仕事あります。
厚生労働省は屋外活動後に入浴し、身体へマダニが付いていないか確認することをすすめています。
特に確認したいのは、
- 首・耳まわり
- わきの下
- 手首
- 足の付け根
- 膝の裏
- 頭部や髪の中
など。
釣りから帰ったらどうせ汗も泥も流したいので、僕は「身体チェックまで含めて風呂」と考えるくらいが一番忘れにくいと思っています。
服や上着についても、身体を見る前にそのままリビングへポンと置くのではなく、一度状態を確認しておきたいですね。
渓流でいう「ヒル」は、主にヤマビルを意識する
次はヤマビルです。
「ヒル」と聞くと川の中を泳いでいるイメージがありますが、渓流釣りで困ることが多いのは、山道や林床から付いてくるヤマビルです。
神奈川県では丹沢山地などで生息が確認されていて、落ち葉の下など湿った場所に潜み、人や野生動物の動き・体温・呼気などに反応して近づくとされています。
だから、実際には川へ入っている時間よりも、
- 林道を歩いているとき
- 藪を抜けているとき
- 湿った落ち葉の多い斜面
- 獣道の近く
などで足元を意識した方がいい場面があります。
ヤマビル対策は「足元の隙間」を減らす
ヤマビルは靴や衣服の隙間から入り込むことがあります。
そのため、対策の中心は足元です。
- 長ズボンを使う
- 靴下とズボンの間に大きな隙間を作らない
- ゲーターなどで裾まわりを覆う
- ヤマビルに適用のある忌避剤を靴・衣類へ使用する
- 生息が多い場所では途中で足元を確認する
渓流釣りって、足元はウェーダーやゲーターでかなり守られているように見えるんですが、ほんの少しの隙間から入られると厄介です。
「装備してるから大丈夫」ではなく、裾や靴下の境目まで見ておきましょう。
ヤマビル用の忌避剤は、製品によって皮膚へ使えるもの・衣類や靴だけに使うものが違うので、こちらも表示を確認して使ってください。
ヤマビルが付いていたら、火で炙らなくていい
ヤマビルの取り方を調べると、塩・アルコール・火などいろいろな方法が出てきます。
神奈川県の資料でも複数の方法が紹介されていますが、遊山では火を近づける方法はおすすめしません。
山の中で肌や衣類の近くに火を使う必要はないですし、普通に火傷や衣類を傷める方が心配です。
付着したヤマビルは、吸盤を指や爪で外すように取り除くか、塩やヤマビルへの適用が確認できる忌避剤などを使って離します。
マダニとは違い、「皮膚に付いていたから医療機関で除去しないといけない」という生き物ではありません。
ヒルを取ったあと血が止まりにくいのは珍しくない
ヤマビルに吸血されたあと、「思ったより血が止まらない」と驚くことがあります。
ヤマビルは吸血時に、血液を固まりにくくするヒルジンという成分を出します。
そのため、ヒルを取ったあとも出血がしばらく続くことがあります。
まず傷口を清潔な水で洗い、清潔なガーゼや布で圧迫して止血します。
ここで「毒を全部出さないと危ない」と考える必要はありません。
傷を強く揉んだり、必要以上にいじったりするより、清潔にして出血を落ち着かせることを優先しましょう。
出血がなかなか止まらない、強い腫れや痛みが出る、傷口が化膿してきたなど気になる症状がある場合は医療機関へ相談してください。
マダニとヤマビル、僕ならここだけは毎回見る
ここまで読むと「渓流って虫だらけで怖いな……」と思うかもしれません。
でも、毎回ものすごい装備を増やす必要はないです。
僕なら最低限、
- 入渓前に肌の露出と足元の隙間を確認
- 必要に応じて対象害虫に合った虫よけを使用
- 休憩時に靴・ズボン周辺を軽く確認
- 車へ戻ったら服をざっとチェック
- 帰宅後は入浴しながら身体を確認
このくらいをひとつの流れにしています。
釣りの準備ってロッドやルアーには目が行くのに、こういう地味な確認は本当に忘れやすいんですよね(笑)。
でも、数分でできる対策だからこそ、先に習慣にしてしまった方がラクです。
怖がりすぎず、「違いを知っておく」がちょうどいい
マダニとヤマビルは、どちらも渓流釣りで出会う可能性がある小さな生き物です。
ただ、必要以上に同じものとして怖がる必要はありません。
マダニは、付着を防ぐ服装と虫よけ、釣行後の確認、吸血中なら無理に取らず医療機関へ。
ヤマビルは、足元の隙間と忌避対策を意識し、付いたら落ち着いて取り除いて傷口を洗い、止血する。
この違いを知っているだけでも、現場で慌てにくくなります。
山の危険を全部怖がっていたら渓流へ行けなくなってしまうので(笑)、知識と準備で避けられるものは避けて、その分ちゃんと釣りを楽しみましょう。
フジ
参考にした公的情報
※本記事は一般的な予防・対処方法を紹介するものです。マダニに吸血されている場合や、発熱・強い腫れ・止まりにくい出血など気になる症状がある場合は医療機関へ相談してください。

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