ユウ
遊山メンバー
渓流釣りを始めて少し経つと、さまざまなテクニックや用語に触れる機会が増えてきますよね。その中でも、とくに頻繁に耳にするのが「アップクロス」という言葉です。
なんとなく「上流に向かって投げるのかな?」とイメージしている方も多いと思いますが、実はただ上流に投げるだけではなく、そこには渓流魚の習性を利用した深い理由が隠されています。
今回は、ルアー釣り初心者の方が次のステップへ進むための大切な知識として、「アップクロスとは何か?」「なぜ渓流ではアップクロスが基本と言われるのか」、そして「上手に泳がせるためのちょっとしたコツ」まで、じっくりとやさしく解説していきます。
この投げ方を少しずつマスターしていけば、狙った場所から美しいトラウトが飛び出してくる感動を、もっと身近に感じられるようになりますよ。
「アップ」と「クロス」。まずは川の方向を整理しよう
「アップクロス」という言葉をすんなり理解するために、まずは川の「方向」を表す基本用語を整理してみましょう。釣り人の立ち位置を中心に、川の流れに対してどの方向にルアーを投げるかで、呼び方が変わってきます。
大きく分けると、以下のようになります。
- アップ(Up):上流。 自分の立ち位置から見て、水が流れてくる方向です。
- ダウン(Down):下流。 自分の立ち位置から見て、水が流れていく方向です。
- クロス(Cross):対岸。 自分の立ち位置から見て、川の真横(正面の対岸)です。
これらを組み合わせることで、投げる方向をより細かく表現できるようになります。
たとえば、「アップストリーム」と言えば、真上流に向かってルアーを投げること。「ダウンストリーム」なら、真下流に向かって投げることになります。
そして今回メインとなる「アップクロス」は、アップ(上流)とクロス(対岸)の間、つまり「斜め上流」に向かってルアーを投げることを指します。自分の斜め前に向かって投げて、ルアーが川を横切りながら自分の手元に戻ってくるようなイメージを持ってみてください。
なぜ渓流では「アップクロス」が王道と言われるの?
海や湖など、流れがあまりない場所での釣りとは違い、水が常に上から下へと流れている渓流では、この「アップクロス」が釣りの大前提、つまり王道のアプローチになります。
なぜ斜め上流に投げるのが良いのでしょうか?そこには、主に3つの大切な理由があります。
1. 魚に自分の姿を見つかりにくくするため(ステルス性)
渓流に住むヤマメやイワナといったトラウトたちは、流れてくるエサ(虫や小魚)を待ち構えるために、常に頭を「上流」に向けて泳いでいます。
もし私たちが下流に向かって歩きながら釣りをしてしまうと、魚の真正面から近づくことになり、すぐに足音や人影に気づかれて逃げられてしまいます。逆に、下流から上流へ向かって釣り上がっていき、斜め上流(アップクロス)にルアーを投げれば、魚の背後(死角)からアプローチしやすくなるため、警戒心を解いた状態でルアーを見せることができます。
2. エサが自然に流れてくる様子を演出できるから(ナチュラルドリフト)
魚たちは、川の流れに乗って弱々しく流されてくるエサが大好きです。
アップクロスで斜め上流にルアーを投げると、ルアーは水流に押されながら、少しずつ下流へと弧を描いて流れてきます。この「自然な川の流れに同調する動き」が、小魚や虫が流されている様子にとてもよく似ているため、魚が違和感なく食いつきやすい環境を作れるんです。
3. 広範囲のポイントを効率よく探れるから
真上流(アップストリーム)に投げると、ルアーはすぐに自分の足元に向かって真っ直ぐ戻ってきてしまうため、魚にルアーを見せる時間が短くなります。
しかし、斜め上流(アップクロス)に投げれば、対岸付近から手前まで、川を横断するように長くルアーを泳がせることができます。一つのポイント(大きな岩の周りや、深みなど)を、より長く、丁寧に探ることができるのも、アップクロスが好まれる大きな理由です。
ルアーの投げ方や選び方に迷ったら、こちらの記事も参考にしてみてくださいね!
アップクロスで釣るための「リールの巻き方」のコツ
アップクロスが渓流の基本だと分かっても、実際にやってみると少し難しく感じる部分があります。それは「リールを巻くスピード」です。
斜め上流に投げたルアーは、川の流れに乗って自分の方へ向かって流れてきますよね。この時、リールをゆっくり巻いてしまうと、流れてくるルアーのスピードに巻き取りが追いつかず、糸(ライン)がたるんでしまいます。
糸がたるんだ状態だと、ルアーが水中でうまく泳がず、ただの金属やプラスチックの塊として流れてくるだけになってしまいます。これでは魚はなかなか振り向いてくれません。
アップクロスでルアーを魅力的に泳がせるためのコツは、「川の流れよりも少しだけ速くリールを巻くこと」です。
ルアーが水流の抵抗をしっかりと受けて、ブルブルッと小刻みに震えるのを感じるスピードで巻くのがおすすめです。最初は「こんなに速く巻いて、魚は追いつけるのかな?」と不安になるかもしれませんが、渓流のトラウトたちは驚くほど泳ぐのが速いので、心配しなくても大丈夫ですよ。
もし、「どうしても糸がたるんでしまう」「リールを巻くのが忙しすぎる」と感じた時は、リールの種類を「ハイギア(一巻きでたくさん糸を回収できるタイプ)」に変えてみると、とても快適に釣りができるようになるかもしれません。
ダウンクロス(斜め下流)はどういう時に使うの?
アップクロスが渓流の基本であることはお伝えしましたが、それでは「ダウンクロス(斜め下流に投げる)」は使ってはいけないのでしょうか?
決してそんなことはありません。状況によっては、ダウンクロスが非常に効果的な場面もたくさんあります。
たとえば、大きな岩の裏側や、流れが少し緩やかになっている深い淵など、「ここに魚が隠れていそうだな」と思えるような魅力的なポイントを見つけたとします。
アップクロスでサッと流しただけでは魚が追いきれなかった場合、少し上流側に立ち位置を変えて、今度は斜め下流(ダウンクロス)へ投げてみるのも一つの手です。
ダウンクロスのメリットは、ルアーを同じ場所に長時間とどめておけることにあります。川の流れがルアーを押し流そうとする力と、リールで巻き取ろうとする力がぶつかり合うため、ゆっくりと時間をかけて、魚の目の前でルアーをアピールし続けることができるんです。
ただし、ダウンクロスは魚の視界に入りやすいため、立ち位置には十分気をつけて、少し遠くから静かにアプローチするように心がけてみてくださいね。
初心者がアップクロスで陥りやすい「根がかり」の防ぎ方
アップクロスを練習していると、どうしても「根がかり(ルアーが川底の石や木に引っかかってしまうこと)」が増えてしまうことがあります。
これは、上流から下流に向かってルアーが流れてくる際、水底の石の隙間にルアーが挟まりやすくなるためです。これを防ぐためには、少しだけ「竿の角度」を意識してみてください。
ルアーを投げた後、竿先を普段よりも少し高め(立て気味)にキープしてリールを巻くと、糸が上方向に引っ張られるため、ルアーが深く沈みすぎず、根がかりをある程度防ぐことができます。
また、川が浅い場所では、あえて「フローティング(水に浮くタイプ)」のルアーを使ってみるのも良い選択です。自分の行く川の深さや流れの速さに合わせて、無理のない範囲で練習していくと、ルアーを失くす悲しさも少しずつ減っていくはずです。
まとめ:川の流れとお友達になって、もっと自由な釣りを
「アップクロス」という言葉、少し難しそうに聞こえたかもしれませんが、その本質は「魚に警戒されず、自然にエサを届けるためのやさしい工夫」です。
「必ずアップクロスでなければいけない」と難しく考えすぎる必要はありません。まずは基本として斜め上流に投げることを意識しつつ、「ここは流れが速いから少し横に投げてみよう」「深いからダウンでじっくり見せよう」と、その日の川の表情に合わせて自分なりに工夫してみるのが、渓流釣りの一番の醍醐味です。
川の流れを読み、魚の気持ちになってルアーを届ける。そのパズルがカチッとハマった時の嬉しさは、言葉では言い表せないほど素晴らしいものです。ぜひ、次回の釣行では「流れの方向」を少しだけ意識しながら、大自然の中でのびのびとロッドを振ってみてくださいね。
ユウ
