遊山メンバー
ユウ
朝露に濡れた草をかき分け、ようやくたどり着いた川のほとり。
目の前には透き通った水が流れ、いかにも魚が潜んでいそうなポイントが上流にも下流にも広がっています。
「上流に行くべきか、下流に行くべきか……」
初心者の頃、私はいつも入渓ポイントで立ち止まってキョロキョロと見回していました。なんとなく歩きやすそうな方へ進み、気づけば魚をすべて散らしてしまってボウズ(釣果ゼロ)で帰る……そんな失敗を数え切れないほど経験してきました。
渓流ルアーフィッシングにおいて、川に入った後の「進み方」には先人たちが築き上げてきた明確なセオリーとマナーが存在します。それを知らずに歩いてしまうと、自分で自分の首を絞めるだけでなく、時には他の釣り人とのトラブルに発展してしまうこともあります。
この記事では、渓流釣りの大原則である進み方と、魚にプレッシャーをかけない入渓直後の立ち回り、そして「イワナ」と「ヤマメ」のどちらを狙うかによるルートの選び方について、現場での実体験を交えながらお話ししていきます。
渓流釣りの大原則!基本は「下流から上流へ」進む
まず一番大切な結論からお伝えすると、小〜中規模の渓流において進む方向は「下流から上流に向かって歩く(釣り上がり)」が絶対の基本になります。
なぜ流れに逆らって、わざわざ足腰がしんどい上流へ向かって歩くのでしょうか。
それは、川に住むトラウトたちの「ある習性」が深く関係しています。
渓流魚は、上流から流れてくる虫などのエサをいち早く見つけて食べるために、常に頭を上流に向けて泳いでいます。
つまり、私たちが下流から上流に向かって歩くということは、魚の「背後(死角)」からコッソリと近づけるということなのです。
逆に、上流から下流へ向かって歩いてしまうとどうなるでしょうか。
魚と真正面からバッチリ目が合ってしまい、ルアーを投げる前に一目散に岩陰へ逃げられてしまいます。
また、私たちが川の中を歩くと、どうしても川底の泥や砂が巻き上がって水が濁りますよね。上流へ向かって歩けば、その濁りは自分の後ろ(下流)へと流れていくため、これから釣るポイントの水を汚さずに済むというメリットもあります。
こうした理由から、ルアーを上流へ投げて巻いてくる「アップクロス」という釣法が、渓流における王道のスタイルとして定着しているのです。
狙う魚で変わる!イワナとヤマメの「住み分け」を知ろう
基本は上流へ進む「釣り上がり」ですが、じゃあ入渓ポイントからどこまで上流へ行けばいいのか、あるいはどのあたりから入渓すればいいのか迷いますよね。
ここでカギになるのが、「今日、自分はどの魚を釣りたいのか」ということです。
実は同じ川でも、上流寄りと下流寄りで釣れやすい魚が変わってきます。以前、ヤマメとイワナの違いの記事でも触れましたが、彼らには明確な住み分けの境界線があるんです。
【ヤマメを釣りたいなら】下流〜中流域の開けたエリアへ
ヤマメは「渓流の女王」と呼ばれる通り、流速が速く、川幅が比較的開けた明るい場所を好みます。パーマーク(側面の丸い模様)が美しいヤマメを狙うなら、山奥の源流まで行かず、里川や開けた中流域の瀬をテンポよく釣り上がっていくのが正解です。
【イワナを釣りたいなら】上流〜源流の岩がゴロゴロしたエリアへ
イワナはヤマメよりもさらに冷たくて水量の少ない場所を好みます。大きな岩が重なり合い、薄暗く隠れ家が多い上流から源流エリアは、まさにイワナの楽園です。黒っぽくて野性味あふれるイワナに会いたいなら、入渓ポイントを思い切り上流側に設定して、源流へ向かって釣り上がっていきましょう。
このように、「今日はヤマメの顔が見たいな」「今回はちょっと山奥でイワナを探そう」と目的を絞ることで、自然と車を停める入渓ポイントや、進むべきルートが決まってきます。
プレッシャーをかけない!入渓直後の「最初の1歩」
進む方向が決まり、いざ川へ足を踏み入れる瞬間。ここで多くの初心者がやってしまう痛い失敗があります。
それは、川を見た興奮のあまり、水際までスタスタと歩いていき、いきなり川の真ん中にジャブッと入ってしまうことです。
これをやってしまうと、足音と大きな波紋で、周囲数十メートルにいる魚たちに「人間が来たぞ!」という警戒警報を出してしまうことになります。釣れない初心者が無意識にやっている魚を散らす行動の代表例ですね。
川に到着したら、まずは水際から数メートル離れた陸地でしゃがみ、自分の足元やすぐ手前のポイントにルアーを投げてみてください。
「え、こんな浅いところにいるの?」と思うような足元の岩陰に、良いサイズのトラウトが隠れていることは本当によくあるんです。
手前のポイントを丁寧に探り終えてから、ゆっくりと音を立てずに水の中へ入り、上流への釣り上がりをスタートさせるのが、プロも実践している基本のアプローチです。
本流や「瀬」では例外も?「釣り下り」のマナーと優先権
基本は釣り上がりだとお話ししましたが、川の規模や場所によっては「下流へ向かって釣る(釣り下り)」のがマナーとされるケースもあります。
代表的なのが、川幅の広い本流や、流速の速い「瀬」のポイントです。
こういった場所では、ルアーを流れに乗せて広範囲に送り込みながら誘う「ダウンクロス」の釣りが主体になります。どこで魚が食いつくか分からない広大なポイントを、みんなで公平に楽しむための暗黙のルールとして、「1~3回キャストしたら、1歩下流へ下がる」というマナーがあるんです。一つの場所に留まらず、少しずつ動きながら探るのが紳士的な振る舞いですね。
また、川で他のアングラーとすれ違う時に覚えておきたい「ポイントの優先権」の考え方もあります。
- 釣り上がっている人: これから進む「上流方向」のポイントに優先権がある
- 釣り下っている人: これから進む「下流方向」のポイントに優先権がある
前回の先行者がいた時のマナーでも書きましたが、もし同じ川に人がいた場合は、この優先権を頭の片隅に置きつつ、「こんにちは、どちらへ行かれますか?」と気持ちよく声を掛け合って、お互いのエリアを譲り合うのがカッコいいアングラーの姿勢です。
まとめ:自分の「今日釣りたい魚」に合わせてルートを描こう
渓流釣りにおける、入渓後の進み方とルート選びについてお話ししました。
川の前に立つと、広大な自然を前にしてどこから手をつければいいのか分からなくなるかもしれません。
そんな時は、「基本は背後からコッソリ近づく釣り上がり」というセオリーを思い出し、今日はヤマメの瀬を撃つか、イワナの隠れる大岩を狙うか、自分のワクワクする方へ足を進めてみてください。
自分でルートを描き、思い描いた通りのポイントから魚が飛び出してきた時の喜びは、何にも代えがたい最高の瞬間になりますよ!
初心者の頃、私は「上流に向かって歩く」という基本を知らずに、川岸を上流から下流へ向かって歩きながらルアーを投げていました。今思えば、魚たちと何度も目が合いながら「なんで釣れないんだろう?」と首を傾げていたんですから、恥ずかしい限りです。渓流釣りは、魚との「かくれんぼ」であり「だるまさんが転んだ」です。いかに気づかれずに背後から忍び寄るか、そのスリルを楽しんでくださいね!
進む方向が決まったら、そのルートに最適なルアーの投げ方や、狙う魚の知識を深めておきましょう!

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