遊山メンバー
ユウ
頭上を覆い尽くすような緑のトンネル、ひんやりとした森の匂い、そして足元を流れる澄み切った水。
自然の懐に抱かれるような渓流のロケーションは最高に気持ちが良いですが、ルアーを投げるアングラーにとっては「障害物だらけの迷路」でもあります。
海釣りや広い本流で釣りを覚えた方が、初めて山奥の渓流に入ると、必ずと言っていいほど「頭上の木の枝」や「背後の岩」にルアーを引っ掛けて絶望します。
せっかく見つけた一等地のポイントも、ルアーを引っ掛けてバシャバシャと回収しに行けば、魚は一瞬で怯えて逃げてしまいます。
以前、アップクロスやダウンクロスといった「投げる方向」のお話をしましたが、今回は根本的な「投げ方の型(フォーム)」のお話です。
どんなに狭い場所でも、自分の思い通りのポイントへルアーを撃ち込めるようになるための「4つのキャスト」と、僕が実践した超簡単な練習法をご紹介します!
なぜ渓流では「上から投げる」のがダメなのか?
釣りの基本である、ロッドを頭の上に振りかぶって投げる「オーバーヘッドキャスト」。
遠くまで真っ直ぐ飛ばすには最高の投げ方ですが、渓流においては「最も出番の少ない投げ方」になります。
理由は単純で、渓流には「天井(木の枝)」があるからです。
上から振りかぶると背後の草木に引っ掛かりますし、投げたルアーは山なりの高い軌道を描くため、着水する前に頭上の枝に絡みついてしまいます。
さらに、高い位置からポチャッ!と落ちるルアーの着水音は、警戒心の強いヤマメやイワナを散らしてしまいます。
渓流釣りを快適に楽しむための大原則。それは、「ルアーの弾道を低く抑え、水面スレスレを這わせるように投げること」です。
そのために必須となるのが、以下の4つのキャスティングフォームです。
① 最初の練習に最適!下から撃つ「ピッチング」
至近距離(5m〜10mほど)のポイントを狙う時に大活躍するのが、下から振り子のようにルアーをふんわりと投げる「ピッチング(アンダーハンドキャスト)」です。
腕の力で投げるのではなく、ロッドの反発力(しなり)を使ってフワッと投げるため、着水音が非常に静かで魚を驚かせません。
また、このピッチングの感覚を掴むための「超おすすめの練習法」があります。キャストが苦手な方は、まずはここから始めてみてください。
【ロッドのしなりを体感する練習法(ボウ&アロー)】
- ロッドの先端から、手が届くくらい(50cm〜70cmほど)までラインを出します。
- 右手でロッドを持ち、スピニングリールのベールを返します。この時、左手でルアー(フックに気をつけながら)を軽くつまみます。
- 左手でルアーを手前に引っ張り、弓を引くようにロッドの先端をグッと曲げます。
- 振り子の原理を感じながら、左手をパッと離すと同時に、右手のロッドを少しだけ前に押し出します。
ルアーが「ピュンッ!」と低い弾道で飛んでいくのが分かるはずです。
この「ロッドが曲がって、元に戻る力(反発力)」を使って投げる感覚が身につくと、ルアーを手で持たなくても、ロッドの先を少し下へ振るだけでピッチングができるようになります。
② 渓流の絶対的エース「サイドハンドキャスト」
渓流で最も多用し、一番最初にマスターすべきなのが「サイドハンドキャスト」です。
ロッドを縦に振るのではなく、地面と平行になるように「横(サイド)」から振る投げ方です。
野球のサイドスローをイメージしてください。
横からロッドを振ることで、ルアーは水面から数十センチの低い軌道を真っ直ぐに飛んでいきます。これなら、頭上が完全に木の枝で塞がれていても、その隙間を縫うようにして奥のポイントへルアーを送り込むことができます。
コツは、ルアーの垂らし(ロッドの先からルアーまでの糸の長さ)を10cm〜20cmほどと短めにすること。
そして腕全体を振るのではなく、手首(スナップ)を柔らかく使い、ロッドの先で半円を描くように「シュッ!」と鋭く振り抜くことです。
渓流ルアーの8割はこのサイドハンドでカバーできるほど、超重要な基本の型です。
③ 究極の省スペース「ロールキャスト」
川幅がさらに狭くなり、左右にも草木が生い茂って「ロッドを横に振るスペースすら無い!」という状況に直面することがあります。
そんな時に大活躍するのが「ロールキャスト(フリップキャストとも呼ばれます)」です。
これは、腕を後ろに振りかぶる動作(テイクバック)を一切なくし、手首の返しだけでロッドの先端を「クルッ」と円を描くように回し、その遠心力とロッドの反発力だけでルアーを弾き飛ばす魔法のような投げ方です。
①で練習した「ロッドのしなり」の感覚がここで生きてきます。
手首のスナップでロッドを回した時の遠心力でロッドティップ(穂先)を曲げ、その戻る力で前方に飛ばします。
自分の後ろや横に全くスペースがない源流域では、このロールキャストが最大の武器になります。
④ 難易度MAXだけど必須!「バックハンドキャスト」
最後は、多くのスピニングユーザーが壁にぶち当たる「バックハンドキャスト」です。
右利きの場合、自分の右側に大きな岩や崖があって、右側からロッドが振れない時に、体の左側からロッドをクロスさせるようにして投げる技術です。
これが本当に難しい!僕も最初は手首が不自然な方向へ曲がってしまい、足元にルアーを叩きつけてばかりいました(笑)。
コツは、無理に遠くへ飛ばそうとせず、脇を締めて肘を支点にし、コンパクトに振ること。
そして、ルアーをリリースする(指から糸を離す)タイミングを、普段のキャストよりも「少し早め」に意識することです。
バックハンドが打てるようになると、「右側が障害物だから、あそこのポイントは諦めよう」という妥協がなくなり、渓流で狙えるポイントが一気に2倍になります。難易度は高いですが、地道に練習する価値は十分にあります。
さらに釣果を伸ばすコツ「フェザリング」を覚えよう
これらのキャストを使いこなせるようになったら、最後に「フェザリング(サミング)」という技術を意識してみてください。
ルアーが目的のポイントへ飛んでいき、水面に着水する直前に、スピニングリールのスプール(糸が出ている部分のフチ)に、人差し指を軽く触れて糸の放出をストップさせます。
これをやるだけで、ルアーが空中でピタッと止まり、余分な糸フケが出なくなります。
結果として、ルアーが「ポチャッ…」という非常に静かで自然な着水音になり、警戒心の強い魚を散らさずに釣果を伸ばすことができる、中級者への必須テクニックです!
まとめ:継続は力なり!キャストが決まれば渓流はもっと楽しい
狭い渓流を攻略するための「4つのキャスト」と、その練習法についてお話ししました。
渓流ルアーフィッシングは、魚を食わせるテクニック以前に、「いかに障害物を避けて、狙ったピンポイントへルアーを落とせるか」というキャスティングゲームの要素が非常に強い遊びです。
最初は誰もが木に引っ掛け、岩にぶつけ、ルアーをいくつも無くして落ち込みます。
でも、回数を重ねていくごとに、ロッドとルアーの重さが手に馴染み、必ず思い通りの弾道で投げられるようになります。まさに「継続は力なり」です。
難しいキャストがピタッと決まり、その直後に綺麗なヤマメが飛び出してきた時の「してやったり感」は、一度味わうと絶対に抜け出せないほどの快感ですよ!
次の週末は、少しだけ川の端っこで、フォームを意識しながらキャストの練習を楽しんでみてくださいね。
バックハンドキャストの練習をしていた頃、あまりにも上手くいかなくて「もう左手で投げた方が早いんじゃないか?」と本気で悩んだ時期がありました(笑)。でも、家の中で(ルアーは付けずに)ロッドだけを持って、鏡を見ながら手首の動きを何度も確認していたら、ある日突然、川で「シュパッ!」と綺麗な弾道で飛んでいったんです。あの時の感動は今でも忘れません。体力づくりと同じで、釣りは地道な練習が最高の釣果を連れてきてくれますね!
投げ方の型を覚えたら、次は川の流れに対する「投げる方向」と「ルアーの動かし方」をマスターしましょう!

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