釣りをしている最中は何ともなかったのに、翌日になったら腕が赤くなってかゆい。
渓流では、そんな「あとから気づくトラブル」があります。
原因になることがあるのが、川へ向かう途中の草むらや林道に生えている植物です。
熊やアブのように向こうから近づいてくるわけではないので、つい油断しやすいんですよね。
特に入渓・退渓するときは、斜面で枝をつかんだり、藪を手でかき分けたりする場面があります。
そこでウルシ類へ触れればかぶれることがありますし、イラクサ類の刺毛や、トゲのある植物で手やウェアを傷めることもあります。
ただ、山の植物を全部覚える必要はありません。
大切なのは、「よく分からない植物は素手でつかまない」「無理に藪へ突っ込まない」「触れてしまったときの基本対応を知っておく」ことです。
今回は、渓流釣りで覚えておきたい植物の特徴と、藪を歩くときの服装・対処法をまとめます。
まず大前提。植物は「写真1枚」で安全判断しない
危険な植物の記事で最初に伝えておきたいのがこれです。
ネットやこの記事の画像だけを見て、現地の植物を「これは安全」と断定しないでください。
植物は成長段階や季節によって見た目が変わりますし、よく似た別の植物もあります。
たとえばツタウルシは3枚の小葉が特徴ですが、島根県も、若いツタにはツタウルシとよく似た葉が出ることがあり、詳しい人でも判別が難しい場合があると案内しています。
逆に「葉っぱが3枚じゃないから大丈夫」という判断もできません。
ヤマウルシはツタウルシとは葉の付き方そのものが違います。
この記事の植物画像について
掲載画像は特徴をイメージしやすくするための参考として使用しています。現地で植物を同定するための資料ではありません。分からない植物には触れないことを基本にしてください。
植物を全部見分けられるようになるより、「分からないものを無理に触らない」方が、渓流釣りではずっと実用的です。
渓流でまず覚えたいのは「ウルシ類」
植物によるかぶれで、まず知っておきたいのがウルシの仲間です。
日本皮膚科学会では、ウルシをアレルギー性接触皮膚炎を起こす代表的な物質のひとつとして挙げています。
渓流沿いや山道では、特にツタウルシやヤマウルシに注意したいところです。
ツタウルシは「3枚の小葉」がひとつの目安
神奈川県によると、ツタウルシはつる性の植物で、葉柄の先から3枚の小葉が出る「三出複葉」が特徴です。
木や岩を這うように伸びるため、斜面で何となく枝をつかんだときに触れてしまう可能性があります。
秋には赤や黄色に紅葉することもあります。
ただし、「3枚だからツタウルシ」「3枚じゃないから安全」という簡単な判定はしない方がいいです。
よく分からないつる植物には、そもそも素手で触れない。
渓流ではこれくらいの距離感で十分です。
ヤマウルシはツタウルシとは葉の形が違う
同じウルシ類でも、ヤマウルシは3枚葉ではありません。
葉の中心となる軸の左右に複数の小葉が並び、先端にも1枚つく奇数羽状複葉という形をしています。
この違いは覚えておいて損はありません。
元の記事ではツタウルシとヤマウルシを同じ特徴のようにまとめていましたが、ここは分けて覚えた方が誤解しにくいです。
ウルシに触れると、すぐ症状が出るとは限らない
ウルシ類のちょっと厄介なところが、触った瞬間に必ず「痛い!」となるわけではないことです。
神奈川県では、ウルシ類の樹液に含まれる成分によるアレルギー反応で皮膚炎が起こり、数時間から1〜2日ほど遅れて症状が現れることが多いと案内しています。
赤み・かゆみ・腫れなどが出ることがありますが、反応の出方には個人差があります。
つまり、
「山では何ともなかったから、植物は関係なさそう」
とは限らないんですね。
翌日になってから「あれ?腕がかゆい……」となったとき、前日に藪へ入ったことを思い出せるだけでも原因を考えやすくなります。
ウルシ類に触れたかもしれないときは、こすらず洗う
「今の枝、もしかしてウルシだったかも」と思ったら、まず触れた場所をむやみにこすらないようにします。
また、その手で目・顔・首などを触らないことも大切です。
神奈川県では、患部を水で洗い、接触した衣類なども洗濯するよう案内しています。
なので現場でできるなら水で洗い、帰宅したら着ていたウェアや手袋もそのまま放置せず洗っておきましょう。
ここで「これを塗れば絶対治る」と自己判断で頑張る必要はありません。
強いかゆみや腫れがある、症状が広範囲に広がっている、顔や目の周辺に症状があるなど、気になる状態なら皮膚科へ相談してください。
受診するときは、「前日に渓流釣りで藪へ入った」と伝えると状況を説明しやすくなります。
チクッと痛い「イラクサ類」にも注意
ウルシとは違って、触れた瞬間に分かりやすいのがイラクサの仲間です。
イラクサ類は、茎や葉に細かな刺毛を持っています。
国土交通省北海道開発局の植物資料でも、エゾイラクサには茎や葉に刺毛があり、触れると痛みやかゆみを伴うことが紹介されています。
種類によって姿は少しずつ違いますが、葉の縁にギザギザがあり、茎や葉に細かな毛が見えるものがあります。
ただし、ここでも「ギザギザだからイラクサ」と決めつける必要はありません。
大事なのは、正体の分からない草を斜面で握り込まないことです。
急な斜面になるほど人間は何かをつかみたくなるんですが、そこが植物トラブルの入り口になりやすいんですよね。
刺毛へ触れて痛みや赤みが出た場合も、むやみにこすらず、付着物があれば水でやさしく洗い流します。
強い痛みや腫れが続くなど気になる症状がある場合は、医療機関へ相談してください。
毒がなくても厄介。「トゲのある植物」は無理に突破しない
植物による危険は、毒やかぶれだけではありません。
ノイバラやジャケツイバラなど、山や河原には鋭いトゲを持つ植物もあります。
こうした植物は、触れれば皮膚を傷つけることがありますし、枝が衣類やバッグへ引っ掛かることもあります。
ウェーダーも「山用の鎧」ではないので、鋭い枝やトゲへ強く引っ掛ければ生地を傷める可能性があります。
目の前にトゲだらけの藪があるなら、そこを突破することが正解とは限りません。
少し戻って迂回できないか。
別の入渓・退渓ルートはないか。
それでも安全に通れそうにないなら、引き返す。
魚がいそうな川を目の前にすると「あと10mだけ!」と行きたくなるんですけどね(笑)。
でも渓流釣りでは、その10mを諦める判断の方が大事なこともあります。
藪漕ぎは「植物をかき分ける技術」より、しないルートを探す
元の記事では、ランディングネットの柄やロッドのグリップで植物を払って進む方法を紹介していました。
でも、この方法は今回削除しました。
ロッドやネットを藪払いの道具として使えば、植物だけでなくタックルまで傷める可能性がありますし、先が見えない藪へそのまま進むこと自体が安全とは限りません。
濃い藪の向こうには、急斜面・段差・穴・倒木などが隠れていることもあります。
僕ならまず、できるだけ明確に歩ける場所から入ることを優先します。
公道や明示されたルート、漁協や施設が案内している入渓場所があるなら、そちらを選ぶ方が安心です。
どうしても草木の多い場所を通る場面では、急がず、足元と進行方向を確認しながら進みましょう。
服装は「絶対防げる」ではなく、肌を直接触れさせにくくする
植物との接触を減らすなら、やはり露出を少なくする服装が基本です。
- 長袖のシャツやアームカバー
- 長ズボン
- 必要に応じて指先まで覆えるグローブ
- 首周りを覆えるウェア
- 藪へ入る場合は目の周辺も枝から守れるよう意識する
ただし、長袖やグローブを着ていれば何を触っても大丈夫というわけではありません。
ウルシ類の成分が付着した手袋や衣類から、別の場所へ触れてしまう可能性もあります。
怪しい植物へ触れた可能性がある日は、手袋をしたまま顔を拭いたりせず、帰宅後にウェアと一緒に洗っておく方が安心です。
真夏は露出を減らすほど暑くなるので、通気性・吸汗速乾性のある服を使いながら熱中症対策も忘れないようにしてください。
「触れると危険」と「食べると危険」は分けて考えよう
山には、皮膚へ触れることより誤って食べることが大きな問題になる植物もあります。
厚生労働省では、代表的な有毒植物としてトリカブト類・バイケイソウ類・ドクゼリ・ハシリドコロなどを挙げ、山菜などとの誤認による食中毒へ注意を呼びかけています。
特にトリカブトやバイケイソウでは、食べられる山菜と間違えた中毒事故が実際に発生しています。
ここで遊山から伝えたいのは、「見分け方を全部覚えて山菜採りをしよう」ではありません。
食用だと確実に判断できない野生植物は採らない・食べない。
渓流釣りに来ているなら、これで十分です。
「なんとなく食べられそう」は、ルアーカラーを選ぶときくらいにしておきましょう(笑)。
植物に触れたあと、こんなときは医療機関へ相談を
山で植物へ触れたあとに少し赤くなったからといって、すべてが重大な症状というわけではありません。
一方で、「植物だからそのうち治る」と決めつける必要もありません。
日本皮膚科学会でも、植物などによる接触皮膚炎では原因物質との接触を避け、適切な診断・治療を受けることが重要とされています。
特に、
- かゆみや腫れが強い
- 水疱や皮膚炎が広範囲に広がっている
- 顔や目の周辺に症状がある
- 強い痛みが続いている
- 症状が悪化している、またはなかなか改善しない
といった場合は、自己判断で粘らず皮膚科などの医療機関へ相談しましょう。
受診するときは、いつ・どこで・どんな植物に触れた可能性があるかを伝えます。
安全な距離から撮影できているなら、植物の写真が状況説明の参考になることもあります。
ただし、受診のためにもう一度その植物を触って採ってくる必要はありません。
結局、僕が一番意識したいのは「知らない植物をつかまない」
危険植物の名前を全部暗記しようとすると、渓流釣りへ行く前に植物図鑑一冊が必要になってしまいます。
そこまでしなくても大丈夫です。
ツタウルシやヤマウルシのような、かぶれやすい植物がある。
イラクサのように刺毛を持つ植物がある。
トゲのある枝を無理に突破すると、自分もウェアも傷つく。
そして、分からない野草は食べない。
このくらいを知っておくだけでも、山での行動はかなり変わります。
ユウ
植物を怖がるための知識ではなく、安心して渓流へ入るための知識として覚えておきたいですね。
この記事で確認した情報
植物の特徴・接触皮膚炎・有毒植物については、以下の公的機関・専門機関の情報を確認しています。
- 神奈川県|野外における代表的な危険生物とその対処法
- 島根県|野外における危険な植物
- 日本皮膚科学会|接触皮膚炎(かぶれ)とは
- 厚生労働省|有毒植物による食中毒に注意しましょう
- 厚生労働省|自然毒のリスクプロファイル
※本記事は山での植物トラブルを避けるための一般的な情報です。植物を画像だけで同定したり、皮膚症状を自己診断したりするためのものではありません。強い症状や気になる症状がある場合は医療機関へ相談してください。

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